Share

第16話 奪う者と奪われる者

Author: 雨音休
last update publish date: 2026-04-22 07:06:38
 大きな公園ほどの面積を持つ広場の片隅だった。空の夕焼けは小さくなり、ゲーム内には夜が始まろうとしている。空気が冷えてきていた。

「お前ら、その服と金を寄越せ。さもなくば殺す」

 黒のジャケット男、ヒイラギが軋むような低い声で恫喝した。野獣のような出で立ち。身長は190cmと言ったところか。両手には鎖鎌くさりがまの武器を持っている。

 辺りにいた他プレイヤーたちが何事かと視線を向けた。関わり合いになりたくないのだろう、人々は遠ざかって行く。不穏な風が吹いて、ウミのモフモフとした尻尾がゆらりと揺れた。

 ベルフラウが前に出た。腰のベルトから二本のダガーを抜き放つ。

「貴方、誰?」

「俺はヒイラギ、HPバーにそう書いてあるだろう? いいかお前ら。スキンカードと金を寄越せ」

「お断りするわ」

「ならば殺す。おい、やれ!」

「「はっ!」」

 ヒイラギの背後に控えていた三人の男たちが囲むように展開する。

 ドンと音がした。

 ――対人戦クエスト、強奪プレイヤーの排除

 トウマは驚いて目の周りにしわを寄せた。

(これもクエスト扱いになるのか?)

 隣にいるウミがトウマの腕のそでを引く。

「ご
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第206話 一緒に探そう

     夕食後の露天風呂。 いま、晴恋とニキで混浴温泉に入っている。 身体には白いバスタオルを巻いていた。入浴用タオルであり、マナー違反ではない。すでに身体と髪は洗ってある。お湯の中に身を沈めながら、晴恋はどぎまぎとしていた。魔導具の灯りに照らされて、水面はキラキラと輝いていた。お湯は少しぬるくて、いつまででも入っていられそうだ。肌当たりが柔らかいお湯である。 他に客はいない。 夜空に浮かんでいる三日月だけが、二人のいちゃいちゃを覗き見ていた。(何だか、大胆な気分になっちゃいます) 晴恋の隣では、ニキがおちょこで日本酒を飲んでいる。湯舟酒のおぼんが水面にぷかぷかと浮かんでいた。晴恋はおしゃくをしていた。 ニキが赤ら顔でつぶやく。「晴恋は可愛いさ」「くぷぷ……どのぐらい可愛いですか?」「ベルさんよりも可愛いさ」「本当ですか?」 胸がドキりと高鳴る。 とびきりに嬉しかった。「本当だよ。ギルドでナンバーワンさ」「それは言い過ぎです」「言い過ぎじゃないって。ウミちゃんよりも、アイよりも、キャルル丸よりも可愛いさ」「くぷぷ、キャルル丸と比べるんですか?」「世界で一番可愛いってこと」「もう、ニキさんったら」 晴恋はニキにお酌をする。 ニキがおちょこを差し出した。「晴恋も飲みなよ」「飲みましょうか?」 晴恋はおちょこをそっと掴み、すするように飲んだ。おちょこを置く。「今日は倒れるまで飲むさ」「倒れたらダメです」「どうしてだい?」「どうしてって。それは、これから、部屋で……」 ニキは気づいたようで、口角をにんまりとつり上げた。 晴恋は恥ずかしくなって右手を上げる。水面がちゃぷんと音を立てた。「もう、ニキさんのいじわる!」

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第205話 呼んでみただけ

     遊園地の出口付近では福引きが行われていた。 抽選器がガラガラと音を立てて回っている。 スタンプラリーのスタンプ一つにつき一回回せるようだった。 遠くには大きな観覧車があった。ゆっくりゆっくりと動いている。海賊船のスイングは未だに続いている。先ほどまでの楽しさを思い出して、晴恋は少し寂しい気持ちになる。日が完全に落ちて夜が訪れている。夜風が吹いて、スカートの裾がはらりと揺れた。だけど七月の夜の空気は温かい。夜空では星々が語り合うように瞬いている。夏の大三角形を探してみた。その際、晴恋は流れ星を見てしまった。消えてしまった後で祈りを込める。ギルドのみんなが幸せになれますように。王城争奪戦で勝利できますように。 今、ニキが抽選器を回していた。 ガラガラと鳴っている。 ぽんと白い玉が吐き出された。「また白さあ」 白い玉は五等賞であり、ポーション一個である。すでにニキは四つのポーションを入手していた。 先ほど晴恋も回してみたが、玉の色は全て白だった。 福引きなんてこんなものである。 晴恋が口角を上げて笑った。「くぷぷ、ニキさん。五等賞ですね」「本当だよ。この抽選器、当たり入ってるのかなあ」「さあ、どうでしょう」「ちくしょー。まあ仕方無いさ」「プレイヤー様、こちらをどうぞ」 福引きスタッフがポーションの小瓶を差し出す。ニキは受け取った。 後ろに並んでいたベルフラウが声をかけた。「ニキさん、代わって。次はあたしよ」「おう。ベルさん、一等賞を引くさ」「ふふん、任せなさい」 福引きを引けるのはベルフラウで最後だった。今のところ全員が白い玉である。 ベルフラウとニキが場所を入れ替える。だけど、ベルフラウはアトラクションを回っていない。スタンプは美術館のものだけのようだ。引ける回数は一回である。 彼女が福引きスタッフにスタンプラリーの紙を見せる。「回して良いかしら」「はい

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第204話 ガーディアン

     遊園地のレストラン前の石畳だった。 太陽は西に大きく傾いており、夕焼けとなっている。オレンジ色に染まっている雲が美しかった。辺りにはプレイヤーたちの人垣が出来ている。これから始まる決闘を、固唾をのんで見守っていた。酔っ払った男性が「頑張れよ! 犬のちびっ子」と声をかけている。アイギスの尻尾が不機嫌そうに跳ねた。黒い大盾を前に突き出すように構えており、顔つきは真剣そのものである。 アイギスの相手はアーティンでは無く、同伴者のリゼットだった。白い仮面が何とも気味が悪い。右手にはダガーを握っている。ベルフラウと同じジョブだろうか?(勝たないと) アイギスは唇を引き結んで相手を睨みつける。 リゼットがステータス画面からフレンド申請を送った。「アイギス。貴方、使い魔なの?」「そうだけど?」「これは舐められたものね」「どういう意味?」「使い魔なんて、AIじゃない。AIが人間様に楯突いちゃダメよ」「お前、ムカつく」 アイギスがフレンド申請を承認する。 リゼットが決闘を申し込んだ。 ドンと音がした。 ――決闘クエスト、初めての決闘に勝利する 決闘は一分間である。 リゼットが走り出した。「アイギス、私がスマートな勝ち方ってものを教えてあげるわ」「お前に教えられることなんてない!」 アイギスが黒い大盾に隠れる。 リゼットが笑うように唱えた。「スティール」 瞬間、アイギスの右手から大盾が消えた。と思ったら大盾はリゼットの左手に握られている。盗むスキルのようだ。 観客たちがどっと歓声を上げる。(嘘!) アイギスは驚愕に下唇をひきつらせた。「ひ、卑怯者!」「あら、この大きな盾、格好良いわね。だけど要らないわ」 リゼットが大盾を後ろの地面に投げる。がらんと大きな音が鳴った。 少し離れたところからウミが応

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第203話 同盟条件

    「みんな、どうする?」 トウマが聞いた。 遊園地のレストランだった。白い丸テーブルに黄色い椅子が並んでいる。空の景色が親しみやすい絵柄で描かれた天井の下で、トウマたちは難しい顔をしていた。午後の四時半を過ぎており、店内は少し混んできていた。店の前にはカラフルな衣装を着たNPCのピエロが登場をして、玉乗りをしながらナイフのお手玉を始めている。愉快な光景だった。どうやら客寄せのようだ。 ウミが首を振って答えた。「ご主人様、同盟は難しいかと思いますぅ。同盟を組んだら、報酬を分けなければいけません。師匠に貸せるお金が、少なくなっちゃいますぅ」「俺っちもそう思うさ。相手のメンバーは11人だろ? 報酬が半分以下になるさ」 ニキがジンジャエールのコップを掴んでひとくち口に含んだ。「僕もそう思う」とアイギス。「私も同感です」と晴恋。「きゃるる?」 キャルル丸はのんきに顔を手でかいている。 ベルフラウだけは深刻そうに俯いていた。ゆっくりと面を上げる。「待ってみんな。同盟を組めば、勝率が上がるわ」「師匠、私たちだけでも勝てますよぉ」 ウミが眉を寄せる。「……そうかしら? 簡単なことじゃ無いと思うけれど」「ふむ」 トウマは腕組みをしてうなった。(俺も反対なんだよな) 時間はそれほど残されていない。 王城争奪戦は五日後である。 トウマが口を開く。「みんな、俺はこう思う」 メンバーは黙ったまま聞いていた。 トウマが低い声で紡ぐ。「出会ったばかりの人間たちの集まりで、連携が上手く取れるとは思えない。作戦を立てたとしても、作戦が内側から崩れることもあり得る。人数の足し算だけで、勝率が上がると考えるのは危険だ」「……それは、確かにね」 ベルフラウが弱ったように言って、顔を曇らせた。 ウミが疑問を向けた。「ご主人様、どういうことですか? もっと簡単に言って欲しいですぅ」「……アーティンさんたちと同盟を組んだとしても、相手が作戦通りに動いてくれる訳ではないということだ」「そうなんですか?」「ウミ、出会ったばかりの人の指示をどこまで信じられる?」「そ、それは、ちょっと分からないですぅ」「相手だって同じだ……これは用心してかかった方がいいだろうな。不安要素が多い。それに、王城争奪戦の作戦はもう考えてある。だから、俺の意見とし

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第202話 協力

     遊園地のレストランで食事になった。 配信はない。 黄色と白を主な色とした活気のあるお店だった。天井が特徴的であり、太陽と月、雲など、空の絵が太い線で描かれている。何とも子供が好きそうなデザインである。丸い机と椅子が等間隔に並んでいた。お客さんがたくさんいて、ギルドで固まって食事をしているようだ。ふと男の客がビールジョッキを机に叩きつけるように置いた。ドンと音が鳴る。「王城争奪戦を勝つためには、メンバーを増やさなきゃいけないんだ!」と大声を上げている。彼はギルドの団長だろうか? 話題は他の客にも伝播したようで、今度は違う客がつぶやいた。「今度の王城争奪戦は、20以上のギルドが参加するらしいぞ」 トウマたちは入り口から一番近い丸テーブルを陣取っていた。室内は広々としており、キャルル丸も入れた。みんながそれぞれ好きな品物を頼み、いま食べている。肉がゴロゴロとしているビーフシチューをスプーンで口に運び、トウマは味わっていた。肉がほろほろとほぐれ、肉汁は濃厚である。ルウは甘く、野菜と肉の出汁が染み出ていた。まろやかな味わいである。だけど緊張で少し腹が痛い。これから、みんなに告げなければいけないことがある。ベルフラウの実家の支払い義務のことだ。 ウミとアイギスがデザートのババロアを食べていた。唇の端に笑みをたたえている。「アイちゃん、これは中々どうして美味しいですよ?」「美味しい」「ふんわりとしていて、トロトロですぅ」「すごく甘い」「きゃるるぅ」 床では、キャルル丸が特大のババロアをがぶがぶとかじっていた。 アイギスの隣には晴恋とニキがいて、やはりデザートを食べている。晴恋がティラミス、ニキはチーズケーキだった。 晴恋がうっとりとしてニキの顔を見る。「ニキさん、今日は楽しかったですね」「晴恋はどのアトラクションが一番良かったさ?」「え、ええっと……観覧車」 二人が見つめ合って頬を赤く染める。 ニキの目がじわりと潤んだ。「晴恋」「に、ニキさん&h

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第201話 ウミの才能

     美術館の中に入る。 みんなで室内の絵を見て回ってみることにした。広い通路を一周して歩く。 白い天井にワックスの塗られた木製の床。壁には様々な絵が掛けられていた。農夫が畑を耕しているもの、着物の女性が振り向いているもの、秋の山を色鮮やかに描き出したもの、何を表しているのか分からない抽象画まであった。だけど不思議とパワーを感じる。 やがて目に飛び込んできた一枚の絵にウミは釘付けになった。ひまわりの油絵である。華やかな絵では無い。花は若干よじれており、部分的に散っていた。けれど、その絵には確かな生命力が息づいている。植物の生々しさと、エネルギーのほとばしりを感じた。ウミは興奮してつぶやいた。「すごい絵ですぅ」「ウミちゃん、これ、何が凄いの?」 隣にいるアイギスが渋い顔をする。 ウミはびっくりして親友を見た。「アイちゃん、もしかして、分からないのですか?」「ちんぷんかんぷん」 アイギスは首を振っている。 ウミはもう一度ひまわりの絵を眺めてみた。(こ、これは絶品です!) 絵の中では、ひまわりが力強く生きている。 作者の溢れる才能を感じた。 ウミはもう一度アイギスを見る。「アイちゃん、この絵は、す、すごいですぅ」「何が凄いのか、説明して」「そ、それは、見てください。ひまわりが、生き生きとしていて、みずみずしくて華麗ですぅ」「今にも枯れそうなひまわりだね」「ち、違いますぅ。このひまわりは、一生懸命に生きようとしていますぅ」「子供がいたずらで描いたのかも」「ち、違いますよぉ。アイちゃんには、分からないですぅ」「うん。分からない」 アイギスはつまらなそうにぼんやりとこぼした。(アイちゃんはおっかしいですぅ) ウミは飽きることなくひまわりの絵を眺めて、胸を高鳴らせていた。 少し離れたところからトウマが歩いてくる。「ウミ、アイ、こっちに来てくれ」「ウミちゃん、行く」 アイギスがウミの手を握って引っ張った。 ウミが残念そうな声を出す。「あうぅ、まだ見ていたいですぅ」 トウマが案内した場所にはみんなが集まっていた。 マーカスとその母親はもういないようだ。 いくつもの机と椅子がある。美術館の女性スタッフが一人いて、ステータス画面を出していた。「みなさんもどうぞ、絵を描いていってください」 女性スタッフは画材を取りだし

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第7話 効率も意義も通じない

     草原の中心に、黒い渦を巻いてテラーウルフが出現する。残忍な顔つき、漆黒の体毛、巨大な白い牙。その圧倒的な存在感に、トウマの背筋から冷や汗が伝った。 テラーウルフが高々と吠える。 「ガアルルルゥゥッ!」  ドンと音がして空中に文字が表示された。 ――クエスト、テラーウルフの撃破 「ボスだ、逃げろ!」「俺は死ぬ訳に行かないんだー!」「私はせっかくレベル3に上がったんだからね!」  ウミがすぐに反応した。その表情は恐怖に彩られており、モフモフとした尻尾がピンと立っている。勢いよくこちらを振り向いた。 「ご主人様、どうすれば!?」「ウミ、動くな」  トウマは状況を冷静に分析する

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第6話 助けたのに

     村の北出口から外へと出る。 草原地帯があった。ところどころには岩がある。そこにいる魔物はフェアウルフの一種類。灰色の毛並みをした狼であり鋭い牙を誇っている。大型犬ほどのサイズだ。 狩りをしているプレイヤー数は多く、必死の形相でモンスターと戦っていた。 「俺の、俺の宿代をー!」「私はまだ朝食も食べていないんだからね!」「や、やべえやべえ、こいつら強えぞ!」  トウマは顔をしかめた。このゲームのプレイヤーはみんな無職なのだろうか? 分からない。(そう言えば、俺も朝食を食っていない) ドンと音がして、頭上に文字が表示された。  ――クエスト、フェアウルフの撃破  隣にいるウミ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第5話 梅おにぎり

     村の広場。 トウマたちは木製のベンチに並んで腰掛けていた。 ゲーム内は昼間であり太陽が出ている。近くにある桜の木が花々を満開に咲き誇らせていた。そよ風が吹いて、花びらがチラチラと地面を舞う。木枝が揺れる音がした。 大きめの梅おにぎりを、ウミが両手で持ってむしゃむしゃと食べている。モフモフと尻尾を振っており、ご機嫌のようだ。満面の笑みを浮かべている。 「美味しいですぅ、美味しいですぅ」「そりゃあ良かった」「ご主人様、ありがとうございます」「味わって食えよ」  梅おにぎり、200ヴァル。 道具屋で買ってきたものだった。手痛い出費である。 トウマは広場の光景を眺めた。中心には噴

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第4話 ヴァルの村

     ゴーレムを倒し終えると、ノーファンの村へと二人は転移した。 辺りには木造りの民家が立ち並んでいる。遠くを見ると森や山があった。地面は土。その道路で、トウマとウミは隣り合って佇んでいた。 「普通の村だな」「そのようですね」「とりあえず、狩り場に行くついでに、村を見て回ってみるか」「はぁい!」  二人で並んで歩き出す。 すぐに他プレイヤーの姿があった。 横切っていく通行人。その顔色は明らかに沈んでいた。他にも座り込んでいる女性がいた。壁にもたれかかっている男。空を見上げている魔法使いふう。誰もが死んだ魚のような目をしている。 異変に気づいたウミが声をひそめてつぶやく。不安に揺れ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status